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東京地方裁判所 昭和31年(レ)448号 判決

控訴人 山田兼一

控訴人 姜謂大

右両名代理人弁護士 島津嘉孝

被控訴人 大日本食堂株式会社

右代表者 加藤清二郎

右代理人弁護士 中西鉄太郎

主文

本件控訴を棄却する

控訴費用は控訴人等の負担とする。

本件につき昭和三十一年十月二日当裁判所がなしたる強制執行停止決定はこれを取消す。

前項に限り仮に執行することが出来る。

事実

≪省略≫

理由

よつて先づ原判決は、控訴人等の原審裁判官に対する忌避申立による訴訟手続の停止中になされた違法のものであるとの控訴人等の主張について判断する。

本件記録及び東京地方裁判所昭和三十一年(モ)第一一九三九号裁判官忌避事件の記録を綜合すると、控訴人等は原審口頭弁論終結後の昭和三十一年九月十七日に原審裁判官津村康に対し不公平な裁判をなす虞あることを理由として、東京簡易裁判所に忌避申立をしたこと及び右忌避に対する裁判が未だなされていないにも拘らず、右裁判官を以て構成する原審裁判所は、昭和三十一年九月二十九日午前十時東京簡易裁判所民事部法廷に於て、原判決を言渡したことが認められる。

然しながら右忌避申立については、その後裁判長裁判官小川善吉、裁判官大沢博、裁判官中川幹郎を以て構成する東京地方裁判所民事第十五部に於て審理の結果、昭和三十二年四月十九日右申立を棄却する旨の決定がなされ、同月二十一日控訴代理人に対し右決定は送達されたが、控訴人等に於て右決定に対し不服申立をしなかつたので、右決定はその不服申立期間の経過と共に確定したことが認められる。而して判決の言渡は如何なる場合といえども民事訴訟法第四十二条但書の急速を要する行為と云うことは出来ないけれども、原審裁判官が誤つて本件忌避申立による訴訟手続の停止中になしたる原判決言渡も、前記認定の右忌避申立を棄却する旨の決定の確定により治癒せられたものと解せられるから、右の点に関する控訴人等の主張は理由がない。

次に控訴代理人は控訴人等は本件和解を承諾する意思はなかつたのであるが、右和解は無効であると主張するけれども右の点に関しては控訴代理人に於て何等の立証もしないからこれを認めることは出来ない。

そうだとすれば原判決は結局相当であつて本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百八十四条に則りこれを棄却することとし訴訟費用の負担につき同法第八十九条、第九十五条を、本件につき先に当裁判所がなした強制執行停止決定の取消とこれが仮執行の宣言につき同法第五百四十八条を夫々適用して主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 池野仁二 裁判官 満田文彦 野崎幸雄)

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